工業所有権専門委員会/特許制度WG
1.活動概要
2002年11月の「知的財産基本法」の成立後、我が国の知財政策は世界最先端の知財立国を目指し、知的財産推進計画のもと、知的財産強化に向けた施策が積極的になされています。その政策の中核を成す特許法等の法律改正、及び付随する審査基準、ガイドライン等の改訂を、調査・研究し、これからの企業における知財活動に生かすことは我々知財部員の重要な責務と言えます。
本ワーキンググループは、前身であるソフト特許ワーキンググループのポリシー、即ち「各国の特許制度を視野に入れ、国内の法制度が本来あるべき姿を思い描きつつ日本の産業競争力を高めるための特許制度確立に向けた調査研究活動を行う事」を継承し、その扱い範囲をソフトウェア特許から、特許法全般に拡大したものであります。
現在の活動は、各年度に課題として抽出された特許法全般におけるトピックを中心に研究を行い、研究結果や、特許法に関するパブリックコメント等による特許庁への意見具申を行い、最終的には参加企業へのフィードバックをしています。
2.参加企業
現在の参加企業は以下の通りです。(50音順)
キヤノン株式会社
京セラドキュメントソリューションズ株式会社
コニカミノルタ株式会社
セイコーエプソン株式会社
東芝テック株式会社
富士フイルム株式会社
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
株式会社リコー
(以上8社)
3.委員会の沿革
・1994年(平成6年)に日本事務機械工業会(JBMA)工業所有権小委員会の分科会としてソフト特許分科会発足。ソフトウェア関連特許の動向調査、審査基準等の検討開始。またビジネス特許も含め、ソフトウェアに絡む広い視点での検討を行いました。
・2001年(平成13年)、委員会全体の組織刷新に伴い、ソフト特許分科会からソフト特許ワーキンググループとして新発足。引き続きソフトウェア関連特許の動向調査、審査基準等を検討。またさらに仮想事例検討、特許法改正に対する検討などを行いました。
・2004年(平成16年)知的財産推進計画等の策定に伴い、多くの特許関係の法改正が検討される中、名称を「特許制度ワーキンググループ」と変更、特許法全般を扱い対象としました。
4.主な活動テーマ(成果等)
・1994年度より
1993年のコンピュータソフトウェア関連発明に関する審査基準について検討
→ソフトウェアによる情報処理自体が自然法則を利用している場合だけでなく、 情報処理自体が自然法則を利用していなくとも処理においてハードウェア資源が利用されているような場合には、 法上の「発明」として保護対象となる旨が明らかにされました。
・1996年度4月
「ソフトウェア関連発明ガイドブック-審査基準から見た事例研究-」を発行
・1996年度
米国でのソフトウェア発明に対する改訂審査基準(MPEP)、その他資料、米国判例等の検討
→米国で媒体クレームの先駆けとなる審査基準が出されたことに伴い、その研究を行いました。
・1997年度
「ソフト特許分科会報告書-平成9年度-」を発行
・1998年度
日本国内における「媒体クレームを含む特許」の出願案件の調査研究。 また日本でも米国と同様、媒体クレームに対応した審査基準改訂 (1997年:特定技術分野における審査に関する運用指針⇒コンピュータ・ソフトウェア関連発明で記録媒体を『物の発明』として 権利化を認める旨を明示しました)が開始され、その検討を行いました。
「平成10年度 ソフトウェア関連発明出願動向分析-ソフト特許分科会報告書-」を発行
・1999年度
ソフト関連発明に関する調査・研究の発展として、話題となったビジネスモデル特許に注目。 日米におけるこのビジネスモデル特許の出願並びに登録の実態について、多くの事例を抽出し分析を行いました。 「平成11年度 ビジネスモデル特許の動向分析-」を発行
・2000年度
プログラムクレームの研究、プログラムを認めた審査基準検討、プログラムクレームに対する仮想事例の検討開始、 さらに産業構造審議会での法改正検討報告の検討、法改正への対応
・2002年度
「平成14年改正特許法の研究-ソフトウェア関連発明の視点から-」(2002年10月)を発行
「ビジネス特許関連発明と第29条第1項柱書違反について」(2003年5月)を発行
・2003年度
改正された「発明の単一性」の研究、及び各国比較について」(2004年6月)を発行
・2004年度
「補正制度・分割制度の見直し等についての考察・研究」(2005年1月)を発行
・2005年度
「ビジネス特許関連発明と第29条第1項柱書違反について~その後~」(2006年7月)を発行
・2006年度
中国審査基準改定について(2007年5月)を発行
・2007年度
BRICsの特許制度を研究、BRICsの出願状況や特有の特許制度などを調査
・2008~2009年度
審査ハイウェイに関し検討、申請要件と実務上の手続き、利便性向上に向けた動向、事例を分析
・2010年度
中国専利権侵害訴訟の実情を研究、中国での専利権侵害訴訟にあたって留意すべき事項を明確化
・2011年度
中国実用新案の維持率と活用について研究、維持比率の高い要因、実用新案活用方法、事例を紹介
・2012年度
複数国(日米欧中)出願時の留意点を研究、日米欧中における審査実務を調査し、複数国に出願する場合に有益となる情報を提供
・2013年度
クラウド・ネットワーク特許に関し研究、ネットワーク・クラウド特許における複数主体/域外適用について、侵害判断の基準を検討し、 複数主体/域外適用が争点となる場合の侵害予測を可能とするための判断材料を提供
・2014年度
損害賠償額の算定方法(クレーム記載とイ号製品における特許の寄与率の関係)に関し研究、 権利者から見た賠償額を高額化するためのクレーム・明細書の記載のあり方、被疑侵害者から見た高額な賠償請求に対する反論方法を検討
・2015年度
日本の知財課題(審査基準・審査運用等)に関する検討を行い、特許庁と各企業における意思疎通に関する問題点に関して、 特許庁へ意見具申
・2016年度
米国特許に関する現状分析を行い、審査の質に関して、法令・審査基準の観点、翻訳精度・クレームの書き方の観点から検討
・2017年度
新時代技術(IoT)の特許権利化手法に関する研究を行い、またIoT関連出願の権利化手法に関して特許庁と意見交換
・2018年度
事務機器分野におけるIoT関連出願の審査状況をZITに基づいて分析を行い、またZIT付与基準に対して特許庁と意見交換
・2019年度
AIを利用した発明の権利取得、権利活用などに関する研究を行い、またAIを利用した発明の特許性について特許庁と意見交換
・2020年度
①UP/UPCの権利化前後の費用面に着目した利用課題、②欧州におけるライセンスオブライトの主要参加国の制度比較および活用状況に関する研究を行い、また特許庁のCOVID-19施策やAI関連発明の出願状況調査結果について特許庁と意見交換
・2021年度
通信技術を利用する立場での標準必須特許に関する調査・分析を行い、また口頭審理のオンライン化について特許庁と意見交換
・2022年度
米国NPEに関する調査・分析を行い、NPEとの訴訟における防御手段のひとつであるInter partes review(IPR)の近年の傾向からIPR申立の際に取るべき対応を検討
・2023年度
複数主体・域外適用に関する研究を行い、国境を跨ぐネットワーク関連発明の日本の判例を皮切りに海外事例も加えて最新の状況をまとめ、実務上の指針を提示
一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)
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